研究概要 |
(i)Chloramphenicol acetyltransferase遺伝子のカセットに手を加えことにより、目的とするNa+-ATPaseプロテオリピド遺伝子ntpKのdeletion mutantの作製に成功し、ntpK遺伝子導入によるNa+-ATPase活性の相補系が構築できた。共役イオン結合部位と想定されるGlu139への幾種類かの変異導入を行った結果、Glu139Lys,Glul39Asn変異体はもとよりGlu139Asp変異体でも全くNa+-ATPase活性の回復が見られなかった。各transformantにおける変異NtpKの発現量にはほとんど変動が見られず、この結果は、他のNa+イオン共役輸送系と異なり、本酵素ではイオン結合部位における機能残基間距離も重要であることを示している。 (ii)本酵素触媒サブユニットAには3個のCys残基:Cys28,Cys174,Cys259が存在するが、Pループ内にはCys残基が存在せず、該当個所にはAla236が存在する。Aサブユニット合成欠失株Nak1を用いたntpA遺伝子の発現系を用いて、各Cysの変異体の性質を調べた結果、Ala236Cys変異体のNEM感受性が野生型に比較して10倍以上上昇し、Pループに存在するCysがNEM作用部位であることが明らかになった。Aサブユニットに点在する3個のCysのSer置換変異体でも、Na+-ATPaseの機能相補が行われることより、本酵素ではAサブユニットの機能における-SH基の関与はないと思われる。
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