研究概要 |
本年度は金コロイドをNa^+,K^+-ATPaseに結合させて、細胞の自由表面上のそれらの運動を一分子レベルで観察した。光ピンセットによる牽引に対する応答を調べた結果、約20%が細胞骨格結合型であること、約80%の分子は、細胞骨格非結合型で、膜骨格フェンスで仕切られたコンパートメント間をホップしていく様な拡散運動をしていることが示された。自由表面での運動を調べているのは、これらのタンパク質の局在化の機構を調べたいからである。これらの運動の大部分がホップ拡散であることがわかってきたので、1分子レベルでのホップ拡散を記述するための数学的な枠組みを整備することにした。 まず、1次元空間に一定の間隔で不完全反射壁をおき、この空間での粒子の拡散運動を記述する簡易式を導いた。完全な解も得られるが、複雑すぎて、コンピュータ上での計算時間を考えると、実際の実験データの解析には不向きである。さらに、単純拡散運動や、一箇所に閉じ込められた運動と区別するための統計的手法を確立した。これらを用いて、やはりホップ拡散をおこなっている粒子が全体の80%であること、微視的拡散係数は1.7x10^<-9>cm^2/s、コンパートメントの面積は平均0.25μm^2、1つのコンパートメント内の滞在時間は平均5秒であることなどが示された。
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