研究概要 |
チャネルを構成する個々のサブユニットのcDNAを組み合わせたクローンチャネル発現実験では、燐酸化を介したCaチャネル活性の調節を再現させることは容易でないことが指摘されている。こうしたなかで我々はBHK細胞(baby hamster kidney cell)に,心筋由来のL型Caチャネルα1サブユニット,骨格筋由来のβとα2/δ,γサブユニットを組み込んで発現させたCaチャネルがnativeのものに極めて近い電気生理学的特性を示し、PKAやPKCを活性化させる操作よって修飾を受けることを確認した。このBHKC12細胞からsingle channel電流を記録すると、灌流液に8Br-cAMPを加えることによりsweepあたりのチャネル開口数の増加と共にチャネル開口時間の増加も認められ、全体としてのチャネル開口確率(NPo)の増加は平均5.7倍に及んだ。一方灌流液にphorbol esterのPMAを加えるとNPoは平均約50%の増加を示したが、PKC活性化作用の無いphorbol esterの4αPDDは無効であった。なお、BHKC12細胞では、これまでnativeの心筋細胞で報告されているもの以外にも複数の小さな開口レベルが観察される。これらのレベル間では相互のtransitionがみられること、また小さな振幅の開口も8Br-cAMPの投与により通常の開口レベルのものと同様の増強効果が見られた点などからこれらのチャネル開口はsubconductance stateであることが推測された。このような小さな振幅のチャネル開口は、頻度は多くないものの、モルモット心室筋などnativeのCaチャネルでも観察された。
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