シスチン尿症は腎における二塩基性アミノ酸輸送の先天的欠損であり、我々はNBATと呼ばれる蛋白の異常が本疾患の原因であることを明らかにした。興味あることに、NBATは推定膜貫通が1回という特殊な構造を有し、アフリカツメガエル卵母細胞で発現させると、イオンチャネルのような特性を有するアミノ酸交換輸送体として機能する。そこで我々は、1回の膜貫通域をもつNBAT蛋白のどの領域がアミノ酸輸送活性あるいは交換輸送に必須であるかを調べる目的で、各種C-末端欠損NBATを用いアフリカツメガエル卵母に発現させ機能解析を行い、これらが活性化因子として機能している可能性を示唆した。そこでNBAT蛋白と相互作用する蛋白のクローニングおよび塩基性アミノ酸輸送システムがどのように構成されているか明らかにする目的で、2種の蛋白質相互作用を酵母細胞内で検出するtwo-hybrid systemを用い、NBAT蛋白と相互作用する蛋白質を同定した。3種の候補遺伝子が得られたが、これらはいずれも既知遺伝子であり、それらの細胞内局在からは、細胞膜上でNBATと相互作用している証拠は得られなかった。次に日本人シスチン尿症患者におけるNBAT遺伝子解析を行い変異部位を同定した。解析した5家系のうち、シスチン尿症の遺伝子異常は、1型シスチン尿症患者にのみ見られた。これらの変異を有するNBATを作成し卵母細胞を用いて、機能解析を行った結果、明らかに塩基性アミノ酸輸送活性は障害されていた。一方、残り4家系では、NBATと相互作用している蛋白に異常があるものと考えられた。そこで各種重合剤存在下に、NBATと相互作用する蛋白を腎刷子縁膜を用いて検討した結果、48kDaの蛋白が同定された。現在、この蛋白のクローニングを行っている。
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