研究概要 |
ラット膵β細胞からクローニングされたATP感受性KチャネルuK_<ATP>-1(Kir6.1)の腎臓における発現を、免疫組織法とウエスタンブロット法により調べた。腎糸球体と細いヘンレループにはuK_<ATP>-1の発現が見られず、近位尿細管、太いヘンレの上行脚、集合管(皮質>髄質外層>髄質内層)において強く発現していた。発現量の順位は、従来知られている腎尿細管各セグメントのNa輸送能の順位とほぼ一致した。尿細管細胞内の局在性について、共焦点レーザー顕微鏡を使い調べた。細胞全体に不規則に発現している蛍光像が観察された。同様の方法を使って、新生児期ラットの腎尿細管の形態学的発達(イオン輸送機能の発達)とuK_<ATP>-1の発現量を、各日齢(5、10、15日)で比較した。uK_<ATP>-1は近位尿細管の形態学的成熟に従って発現が増加した。これらの結果は、uK_<ATP>-1が尿細管におけるイオン輸送機能に重要な役割を果たす事を示唆した。 本実験の経過中に、uK_<ATP>-1単独ではNa^+/K^+ ATPaseとの共役Kチャネルとして機能しない可能性が生じたので、uK_<ATP>-1の機能発現を修飾する共役蛋白(or subunits)の探索を試みた。CHIF(channel-inducing factor)(Attali et al.,1995)の塩基配列を元にして調製したオリゴヌクレオチドを使って、ラット腎cDNAライブラリーからCHIFホモログを単離した。現在、COS1細胞に共発現させATP感受性Kチャネルの電気生理学的、薬理学的特性の解析とイオンチャネルの活性化を調節する分子機構について実験を進めている。
|