グルタミン酸トランスポータファミリーは、グルタミン酸トランスポータと中性アミノ酸のトランスポータからなる。その基質結合部位同定のために部位特異的変異導入による取り込み阻害薬認識部位の解析、ファミリーのメンバー間の機能比較による構造・機能相関の解析に有用な情報の抽出を行った。グルタミン酸トランスポータEAAC1とGLT-1のジヒドロカイニン酸(DHK)感受性の違いに基づくキメラ解析で同定された領域(マウスEAAC1の301-338に相当)中のC-末側にあるserine rich部位を両者で相互に入れ替える部位特異的変異導入を行い、この部位がDHK感受性の決定において重要な部位であることを明らかにした。このserine rich部位は、恐らくDHK分子中のbulkyな構造を受け入れる部分であり、基質結合部位の一部を構成すると思われれるが、基質グルタミン酸分子と直接相互作用する部域ではないと考えられる。基質アミノ酸とより直接相互作用する部位及びNa^+結合部位の同定のための手掛かりを得る目的で、ファミリーメンバー間の詳細な機能の比較を行った。中性アミノ酸トランスポータASCT1とASCT2は、ASCT2がグルタミンとアスパラギンを輸送し、ASCT1が2個のNa^+と共役するのに対して、ASCT2は1個のNa^+と共役し、しかもLi^+を受け入れることから、両者の基質結合部位とNa^+結合部位が異なった性質をもつことが示された。さらに、マウスEAAC1はシステインを輸送するがマウスGLT-1のシステイン輸送活性は低いことが明らかになった。また、Na^+依存性トランスポータであるASCT1とASCT2がNa^+非依存的にアミノ酸の交換輸送を行うことが明らかになり、Na^+共役トランスポータとアミノ酸アンチポ-タの協関の観点から興味深い事実が掴えられた。本年度の成果は、さらなるキメラ解析による基質アミノ酸側鎖結合部位とNa^+結合部位の同定、C1チャネルpore領域を決定へと繋がるものである。
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