研究概要 |
D1ドーパミン受容体は主に、GTP結合蛋白質Gsαを介してアデニル酸シクラーゼ(AC)を刺激し、cyclicAMP濃度を上昇させる。この系は幾つかの段階、特に受容体とG蛋白質レベルで調節を受けるが、サブタイプによって異なった活性調節を受けるACレベルでの調節は明らかではない。本研究ではヒト神経芽細胞種SK-K-MC細胞を用いてD1受容体がどのサブタイプのACとカップリングし得るかを明らかとすることを目的とし解析を行った。その結果、(1)ACの各サブタイプに保存された領域をプライマーとしてRT-PCR法を行い、この細胞にmRNAとして発現するACのサブタイプはtype3(Ca^<2+>-calmodulin-dependent stimulation), type6(Ca^<2+>-and protein kinase A-dependent inhibition)およびtype7(protein kinase C-dependent stimulation)であること、(2)type6およびtype7ACは機能的にも発現しているが機能的なtype3AC活性は見られないこと、(3)各々のAC活性を変化させた場合、ドーパミンによるcyclicAMP産生はAC活性の変化に対応すること、また(4)protein kinase Aを介してtype6ACを抑制した条件下ではDI受容体刺激は大きく抑制されることが明らかとなった。D1受容体が豊富なラット線条体ではtype6 ACと同様の調節を受けるtype5ACが主に発現しており、生体内においてもD1受容体を介するシグナルがACレベルで同じ調節を受ける可能性があり、ACの組織内での発現の違いがそのcAMPを産生させる受容体シグナルの多様性を規定する一因であることが示唆された。
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