研究概要 |
申請者らはこれまでに、コリン作動性ニューロンモデルのPC12細胞について主にカテコラミン分泌に伴う膜脂質シグナル変換機構について一連の研究を進めており、コリン含有燐脂質のホスファチジルコリン(PC)を分解するホスホリパーゼD(PLD)が重要な役割を有することを示した。本年度は、カルバコール刺激によるPLD活性化の調節に、他の細胞系で重要視されているプロテインキナーゼC(PKC)の関与は少なく、Ca^<2+>依存性のチロシンキナーゼが重要であることを明らかにした(J.Neurochem.1997)。また、PC12細胞のPLDのin vitroにおける活性調節メカニズムについても詳細な検討を行ったところ、オレイン酸依存型のPLD活性が高いことが示された(J.Lipid Mediators and Cell Signaling 1996)。ラットPLD遺伝子の解析により、アイソフォーム(rPLD1a,rPLD1b,rPLD2)が存在することを明らかにし、rPLDla,rPLD1bはalternative splicingにより生成されることを世界ではじめて見出した。神経膠腫細胞(C6)の細胞突起伸長(BBRC 1996)、PC12細胞のcAMP上昇あるいはNGFによる神経突起伸長時にそれらmRNAの発現パターンが変動するという知見をRT-PCRにより得ている。また、C6の細胞分化誘導時にはPLDの活性制御因子として重要視されているPKC、低分子量GTP結合蛋白質RhoAの発現が上昇することを明らかにした(Mol.Brain Res.in press)。
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