ニューロプシンの機能を明らかにする手だてとして、海馬錐体細胞より行った初代培養にリコンビナントニューロプシンを添加し、その影響を検討した。その結果、ニューロプシンを添加した神経細胞においては、コントロールの神経細胞より、有意に長くブランチングした突起伸展が生じた。このことからニューロプシンが発生における可塑的変化に重要であることが考えられた。さらに詳しくニューロプシン遺伝子の機能を検討する目的でニューロプシン遺伝子欠損マウスの作成を試みている。まずマウスニューロプシン遺伝子上の第1エクソンより第3エクソンすべてを、大腸菌ネオマイシン耐性遺伝子にて置き換えるようにプラスミドを構築した。マウスES細胞にこの遺伝子を導入し、G418およびGANCによるポジティブ/ネガティブスクリーニングによって選別した。PCRおよびゲノミックサザンブロッティングにより、3系統の独立したニューロプシン遺伝子組み替えES細胞クローンを得たことが確認できた。これらの細胞を含む胚盤胞を偽妊娠母体に移植することによりキメラマウスを得、このマウスのバッククロスにより、heterozygoteでニューロプシン遺伝子が欠損したマウスを作成できた。ニューロプシンは皮膚にも発現しているが、heterozygoteマウスは外観からでは皮膚に異常は認められず、またその行動にも異常は認められてはいない。今後はこのマウス同志の交配によりhomozygoteを得る予定である。さらに組織構築、神経可塑的な活動の変化等の検討を加える予定である。
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