松果体実質細胞はメラトニンを合成し分泌する内分泌細胞である。本研究において、我々は松果体実質細胞がグルタミン酸作動性のパラニューロンとでも呼ぶべき性質を備えていることを見いだした。すなわち、(1)松果体実質細胞にはシナプス小胞のカウンターパートとしてのマイクロベジクル(microvesicle)が多数存在している。(2)このマイクロベジクルにはvesicular glutamate transporterが発現しており、液胞型H^+-ATPaseが形成する膜電位差を駆動力としてグルタミン酸を濃縮する。(3)マイクロベジクルにはSNARE complexが含まれており、神経と似た機構(regulated exocytosis)により内部のグルタミン酸が細胞外へ放出される。(4)松果体細胞自身にグルタミン酸受容体が発現しており、放出されたグルタミン酸はパラクリン(またはオートクリン)様の機構で隣接する松果体実質細胞を刺激する。その結果、メラトニンの分泌が抑制される、昨年後半からの研究でさらに以下のことを明らかにした。 (1)松果体実質細胞はグルタミン酸以外にアルパラギン酸を開口放出する。放出されたアスパラギン酸はL体でありD体ではなかった.(松果体実質細胞内部には高濃度のDアスパラギン酸が存在している)。放出されたアスパラギン酸はグルタミン酸と同様、メラトニンの分泌を強力に抑制した。 (2)メラトニン分泌の抑制に関与すると考えられるグルタミン酸受容体を特定した。 (3)グルタミン酸の再吸収系と考えられるNa^+-dependent glutamate transporterを同定した。神経細胞と異なりGLT-1 typeが発現していた。
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