まず、タンパク質SSIの構造形成機構を速度論的に探るため、pHジャンプ法をCDあるいはNMR測定を組み合わせて行った。実験条件としては4℃、pH5付近でSSIがnative構造が保持している状態から、pH1.5付近で低温変性後の特殊な3次構造(D′)をとる状態までのジャンプとした。これより、 1、CDによると。3次構造が一度かなり壊れてから序々にD′構造が形成されることがわかった。これは、native構造とD′構造のCDスペクトル上の交点で測定を行うことで精密に測定できた。 2、NMR法では、まずジャンプ直後、装置のdead timeに大きな構造転移があり、100秒かけてαヘリックスC端側にあるHis106やタンパク質内部にあるTrp86のシグナルが別の転移を示し、さらに320秒で最終的なD′構造となることがわかった。 また、SSI主鎖ププチド結合のNH水素の重水素交換反応を2次元NMR法により全シグナルを分離して観測することにより、βシート中でも部位によて異なるゆらぎを持っていることを明らかにした。この際、大腸菌による発現システムによって同位体標識を行ったSSIも用いた。 Osmolyteの効果は、まず安定性を熱測定によって調べた。この結果、最も効果の高かったsarcosineでは変性温度が10℃以上上昇し飛躍的に安定化に寄与することが明らかになった。ところが、変性の可逆性は逆減衰してしまい、平衡系として扱えないことがわかった。また、低温変性は、Osmolyteの添加によって0℃以上では明確に観測できないことがわかった。これらの結果は、Osmolyteが熱容量変化を減少させること、変性状態のタンパク質とも強く相互作用することを示唆するものである。
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