研究概要 |
蛋白質の折れ畳みメカニズム、タンパク質表面やタンパク質内部の残基のパッキング等のタンパク質の構造安定化への寄与の精密な評価等、基礎化学的研究を目的として、69残基からなる球状蛋白質に似たミニ人工モデル蛋白質SGPのデザイン,合成をおこなった。この蛋白質は中心に短い脂溶性のα-ヘリックス,その周りを3つのより長い両親媒性塩基性α-ヘリックスでとりまかれた構造からなる。CDによるコンホメイション解析や変性実験などを通じて、この蛋白質がfoldingのメカニズムや球状人工タンパク質の合成の基本モデルになると考えられた。 そこで、今回、このSGPを、より天然球状蛋白質に似た状態に近ずけるために、色々なanalogを合成し構成アミノ酸側鎖のパッキング状態を調べた。SGPの4つのα-ヘリックスのうち、中心の脂溶性部は11残基のAla oligomerから、また3本の両親媒性部は16残基からなっており、Leu,Lysを適当に配してα-helixを取ったときに両親媒性になるようにデザインしてある。各々のhelixはGlyを含むβ-ターンループでつなげてある。 このSGP関連タンパク質の3つのアナログをデザイン合成してその物性をしらべた。脂溶性α-helixを、より脂溶性の高いLeu oligomerに変えたもの(Leu-SGP)、3つの両親媒性部のLysの一部をGluに変え、荷電相互作用させたもの(SGP-Glu)、βターン部全てをGlyに変えてループ部のフレキシブル度を高めたもの(SGP(Gly))てある。その、物性を調べたところ、Leu-SGPは、SGPより、さらに変性しにく、高濃度のグアニジン塩酸塩の添加後でも変性しない。このことは、脂溶性中心部分が安定化に強く寄与していることを示す。この溶液中の分子量を、Gel-HPLC、及び超遠心沈降法を用いて、調べたところ三量体であった。SGP-Gluも同様に安定化されたが、その度合いはSGPとLeu-SGPの中間に位置した。このものは、水溶液中で、二量体であった。また、SGP(Gly)がSGPとほとんど同じ溶液物性を示したことは、ループ部分は、foldingの要因ではないことを示す。そして、このものは、SGP同様単量体であった。このことは、SGPの適当な改変が会合体の様子を決定しうることをしめし、今後蛋白質の構造と会合体の相関を調べる、格好のモデルとなることをしめす。
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