研究概要 |
先に見出したテッポウユリの雄性配偶子核(生殖核・精核)に特異的なコアヒストン変種(p22.5,p21,p18.5)に対する抗体を用いて、未熟花粉のcDNAライブラリーから、それぞれのcDNAを単離し、塩基配列を決定した。ホモロジー検索の結果、いずれも既知の遺伝子と顕著な相同性はなかったが、いくつかの植物種(コムギ・トウモロコシ・シロイヌナズナなど)で単離されている体細胞型コアヒストン遺伝子との相同性が認められた(p22.5はヒストンH2B,p21はH3,p18.5はH2Aと塩基レベルで約50%、アミノ酸レベルで40-50%の相同性)。以上のように、雄性配偶子特異的コアヒストン変種は体細胞型コアヒストンとは一次構造上顕著に異なる分子種であることが判明した。 単離したp21のcDNAを用いて、p21mRNAの発現をノーザン法によって調査したところ、二細胞性花粉の初期から花粉成熟にかけて発現がみられ、成熟花粉においても多くのmRNAが蓄積されていることがわかった。そこで現在、花粉内での発現場所、蓄積場所をin situハイブリダイゼーション法によって詳しく調査中である。 一方、テッポウユリの生殖核に豊富に蓄積されるヒストンH1様タンパク質(p35)は、アミノ酸配列の解析から、ヒストンH1の変種であることが確かめられたとともに、抗体を用いた蛍光染色によって、体細胞核の核小体(仁)に植物種を問わず広く分布していることが示された。この核小体構成タンパク質の生殖過程における機能は今後の課題である。
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