研究概要 |
出芽酵母温度感受性変異株tom1は高温下におくと細胞周期G2/M期で増殖を停止する。さらに、核が膨潤し核小体がバラバラに断片化するなど核構造の異常が観察される。tom1温度感受性変異株がmRNAのExportに欠損を持つか、オリゴdTをプローブにしたFISH法で調べたところ、mRNAが核膜周辺に蓄積していた。従って、TOM1は核輸送にも関与していることが分かった。TOM1遺伝子は分子量360KdのC末端にhectドメインを持つユビキチンライゲ-スをコードしている。Tomlpのhectドメインを欠失すると細胞は温度感受性増殖となるが、この細胞に核蛋白-hectドメイン融合蛋白を大量生産させると温度感受性が相補された。このことはユビキチンライゲ-スとしてのTom1蛋白が核内でも機能していることを予想させる。さらに、tom1温度感受性の復帰変異(tmr,tom1 revertant)として、cyr1やsch9が単離され、PDE2やBCY1がマルチコピーサプレッサーとなることから、tom1温度感受性はRAS-cAMP経路の活性を下げることによって抑圧されることが分かった。また、フォスファターゼ2AのBサブユニットをコードするCDC55にベノミル感受性変異が入ることによってtom1温度感受性を抑圧した。この変異はCDC55破壊株とは異なり細胞形態に異常を引き起こさない変異で、種を越えてよく保存されたN端近くの領域に存在していた。今後はユビキチン化を受けるターゲット蛋白の検索、直接相互作用する蛋白の検索などにより、蛋白のユビキチン化/分解という局面から核構造と機能、特に核輸送について分子レベルで研究する。
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