研究概要 |
1.EG細胞における刷り込みについては鋭意検討中であるが昨年より十分進んだ結果は得られなかった。 2.マウスSearle転座の隣接2型分離の結果生じた不均衡な核型、40(X,X^<16>,16,Y)を持つES細胞TMA17での検討を更に進めた。浮遊培養開始後24時間目には、胚様体の表面の細胞ばかりでなく、内部の細胞も形態的に完全に未分化状態を失っていた。未分化細胞に発現されるOct3、分化細胞に発現するEndo遺伝子の発現の調査により、TMA17細胞の速やかな分化が確認された。また、レクチンとの反応性は内胚葉ばかりでなく、栄養細胞(trophoblast)への分化の可能性も示唆する。現在、栄養細胞特異的遺伝子の発現を調査中である。15EA03:3.2種類のロバートソン型X/常染色体転座、Rb2とRX9、を持つ雌マウスより得られる胚の発生を調査した。この雌ではX染色体の不分離が起こるので、XXYとXXX胚が高頻度で得られる。母由来X染色体はepiblast以外では不活性化しないようimprintされているので、その影響の検討を意図した。目的の胚は約12%の頻度で得られたが、その他にも注目すべき発生異常を示す胚が認められた。単層柱状上皮であるembryonic ectodermが、あたかも接着能を失ったかのように、着床後1日目の5.5日目胚の時期に原羊膜腔にこぼれ出てしまう。同時にEmbryonic ectodermを包むvisceral endodermは本来細胞同士がtight junctionによって緊密に結合しているはずであるが、結合が失われ崩壊が進んでいる。5.5-6.5日胚では出現率は約20%である。平均的に出現するとすれば-腹毎に1-2頭となるはずであるが、実際には0と4以上が期待よりも多い。異常胚の核型は正常で、遺伝様式は明らかではないが、精子由来で発現が抑制されるimprint遺伝子の関与も否定できない。中胚葉形成の前提になる、発生初期の極めて重要なイベントの異常なので検討を続ける価値はあろう。ES細胞株を樹立することによって培養下での解析を可能にする予定である。
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