研究概要 |
我々はこれまでに、PP2Cには6種類のアイソフォーム(α, β-1, β-2, β-3, β-4およびβ-5)が存在することを明らかにした。これからのうちαとβは異なった遺伝子産物であり、βの5種類のアイソフォームは単一のpre-mRNAからの選択的スプライシングの産物である。また,これまでの研究の結果,マウス精巣の第1減数分裂パキテン期の精母細胞において、PP2Cβ-3, -4および-5の発現が著しく上昇することが明らかになった。そこで、今回、精母細胞におけるPP2Cβ遺伝子の発現制御機構の解明を目的に、PP2CβゲノムDNAのクローンングと構造解析およびRT-PCRを用いた転写産物の解析を行った。その結果、翻訳開始点を含むエクソン(IV)の上流に3つのエクソン(I, II, III,)が存在し、新生児マウス精巣(精巣細胞のみを含む)ではIIVを含む転写産物のみが検出されたのに対し、成獣マウス精巣の転写産物では、II, III, IVエクソンの読みとりが行われた。さらに、Iエクソンの上流には構成的発現に関与すると考えられるプロモーター活性が検出された。以上の結果から、IIエクソンの上流に精巣特異的発現に関わるプロモーターが存在することが示唆され、現在その解析を進めている。 PP2Cの6種類のアイソフォームの機能の解析を目的に、HAタッグをPP2CのN末端に付加したキメラタンパク質のCOS7細胞での発現システムを確立した。抗HA抗体による免疫染色により、発現されたPP2Cの細胞内局在を調べたところ、いずれのアイソフォームも、主に細胞核い局在することが判明した。また、6種類のアイソフォームのうちPP2Cαのみが細胞内でリン酸化され、その部位がC末端領域のセリン残基であること、および、PP2Cαのリン酸化レベルが、培養中に添加したオカダ酸によって2倍に上昇することが明らかになった。以上のことから、PP2Cαを介する新規の脱リン酸カスケードの存在が示唆された。
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