研究概要 |
我々はPCRを応用した高感度かつ定量的なテロメレース活性の検出方法を独自に解析し、テロメレースのDNA合成酵素としてのprocessivityをはじめとする生化学的解析を行ってきた。その結果、非常に高純度のヒトテロメレースを純化精製することに成功した。一方、テトラヒメナ・テロメレースのp80蛋白質配列を用いたデータベースサーチから、最近、テロメレースを構成する蛋白質の一成分のcDNAクローンを世界ではじめて単離することに成功した。このcDNAクローンの構造解析により、約2,800アミノ酸をコードするopen reading frameが同定された。部分的なリコンビナント蛋白質を大腸菌で発現させ、ウサギを用いてポリクローナル抗体を得た。この抗体は、ウエスタンブロッティングおよび免疫沈降により、SDS-PAGE上、約260 kDの分子量に相当する泳動度を示す蛋白質を同定した。蛋白質精製に用いた複数のクロマトグラフィーの画分の検討により、この蛋白質の存在と活性の溶出パターンは完全に一致した。さらに、抗体を用いた免疫沈降物にはテロメレース活性を検出することができた。以上のことより、我々は、クローン化したcDNAは、テロメレースを構成する蛋白質の一つであると結論し、TLP1(telomerase protein 1)と名付けた。 次に、熊本大学阿部訓也助教授との共同研究により、マウス初期胚に見られる始原生殖細胞のテロメレース活性を検討するために、アルカリフォスファターゼ-lacZ癒合遺伝子のトランスジェニックマウスより得られた精製始原生殖細胞について検討したところ、意外なことに周囲組織の初期胚細胞よりも低い値を示した。現在、TLP1蛋白質の有無について解析中である。
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