サイクリンはcdkと結合してcdkキナーゼ活性を調節することで細胞周期進行を制御するタンパク質因子である。細胞周期におけるA型サイクリンの機能と構造の関係を明らかにするため、XenopusサイクリンAを出芽酵母に導入して細胞周期停止を引き起こし、それを抑圧する酵母変異株(サプレッサー変異)を分離して、サイクリンA機能に関る因子の同定及びその解析を行った。 (1)Xenopusの卵成熟と胚発生過程における生殖細胞型サイクリンA1と体細胞型サイクリンA2の発現を調べた。サイクリンA1は卵母細胞成熟のGVBDの時期に合成を開始し、器官形成期後消失した。一方、サイクリンA2は卵母から卵割期では発現せず、器官形成期後に発現がみられた。サイクリンA1とA2で発現の時期が異なる。 (2)サイクリンA1cDNAを出芽酵母の発現ベクターにつないでGAL1プロモーターにより発現させて酵母の細胞周期を停止させた。サイクリンAの発現は、本来、分裂期で母細胞と娘細胞に分配されるべき染色体DNAがそのまま娘細胞に引っ張りこまれる現象を引き起こした。この染色体の異常な動きはDNA複製なしに起こった。サイクリンA1と酵母Cdc28の複合体に依存したキナーゼ活性に依存してこの現象が起こった。さらに、サイクリンA1による細胞周期停止抑圧する酵母変異株(サプレッサー変異)を分離してその遺伝子をクローニングし、CDC28の3つの異なる変異を同定した。それら3つの変異部位はサイクリン分子と向き合ったCdc28のC末端葉ドメインにマップされた。変異部位の違いにより、それぞれのサイクリン-Cdc28複合体との結合能に差が見られた。 細胞周期各時期におけるサイクリン-Cdk複合体の結合特異性に、CdkのC末端葉とサイクリンの相互作用が重要な働きをしているのかもしれない。
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