カイコの絹糸腺で特異的に発現するフィブロイン遺伝子やセリシン遺伝子は、幼虫のmolting cycleに依存して転写レベルで発現が制御されており、ON、OFFを繰り返すことから、脱皮ホルモン(エクダイソン)や幼若ホルモンの制御下にあると考えられる。絹糸腺におけるこのような遺伝子発現制御機構を分子レベルで解析するため、フィブロン遺伝子の転写制御エレメントに結合し、molting cycleに依存して活性の変動する因子FMBP-1を精製した。FMBP-1はDNA結合特異性を担う分子量32kDaのタンパクp32と、その結合活性を促進する36kDaのタンパクp36から成ること明らかにし、p36については精製したタンパクのアミノ酸配列をもとにcDNAクローニングした。cDNAをもとに大腸菌で合成したリコンビナントタンパクは精製したp36と同様にp32の結合促進活性を示した。 さらに、絹糸腺におけるホルモンシグナルの伝達経路を解析するため、絹糸腺において発現している核内ホルモンレセプター遺伝子のクローニングを行い、既に報告されているBmEcR、BmFTZ-F1、BmCF1/Uspの他にBmHNF4をクローニングした。また、これら遺伝子の幼虫後期における発現をノーザンブロット法を用いて解析したところ、ヘテロダイマーを作ってエクダイソンレセプターとしての機能を果たしていると考えられるBmEcRとBmCF1/Uspの発現が拮抗的に制御されていることが明らかになった。今後これらの遺伝子の発現制御の相互関係を解析していく予定である。
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