研究概要 |
エクジステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ(egt)遺伝子を欠失し、カイコ前胸腺刺激ホルモン(BmPTTH)を発現する組換えバキュロウイルスの殺虫効果が、カイコ幼虫とヤガ科昆虫で異なるという現象と、PTTHの種特異的作用との関係を分子レベルで明らかにすることを目的として研究を行い、以下のような知見を得た。 1ウイルス感染経路が組換えウイルスの殺虫効果に及ぼす影響 多角体形成組換えウイルスを用いた経口感染と多角体非形成組換えウイルスの注射による感染のいずれにおいても、egt欠失BmPTTH発現組換えウイルスが最も早くカイコ幼虫を致死させたことから、ウイルスの殺虫効果は感染経路に依存しないことが判明した。 2組換えウイルス感染カイコ幼虫の体液エクジステロイド量及びウイルス増殖 BmPTTHを発現する組換えウイルスに感染したカイコ4齢及び5齢幼虫の体液エクジステロイドの増加時期は、非感染及びegt欠失ウイルス感染幼虫より早まった。ただし、egtとBmPTTHを両方発現するウイルスに感染した幼虫では、20,26-dihydroxyecdysoneのみが増加しており、活性の高い20-hydoroxyecdysoneやecdysoneの増加は認められなかった。また、egt欠失ウイルスに感染した幼虫では、絹糸腺、前胸腺、神経系など本来ウイルスが感染しにくい組織において多角体の形成が早まることが判明した。 3異種PTTH遺伝子のクローニング及び発現系の開発 アメリカシロヒトリのPTTH(HcPTTH)のcDNAをクローニングするために終齢幼虫及び非休眠蛹の脳から抽出したmRNAを用いてcDNAライブラリーを作製した。また、タバコスズメガのPTTH(MsPTTH)を分泌発現する組換えカイコバキュロウイルス、ならびに、BmPTTHを発現する組換えアメリカシロヒトリバキュロウイルスの作製に成功した。
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