1.FTZ-F1遺伝子の発現へのDHR3の関与 II-4/II-7結合部位をプローブとしたゲルシフトアッセイ系に、DHR3抗体を加えたところ、II-4/II-7によるバンドがスーパーシフトし、II-4/II-7がDHR3であることが判明した。野性型のFTZ-F1遺伝子発現制御領域を持つ融合遺伝子の発現パターンと、DHR3結合部位に変異を持つ融合遺伝子の発現パターンの違いは観察されなかった。DHR3を様々な発生過程で誘導したが、顕著なFTZ-F1の発現は見られなかった。以上のことから、DHR3は、FTZ-F1の発現に大きな影響を与えないと推定した。 2.FTZ-F1によるEDG84Aの発現制御機構の解析 転写開始点の上流-408bpまでを有すると本来の発現パターン(頭部と胸部の表皮での発現)を再現できること、-194bpまで削ると腹部表皮での発現が見られるようになること、-104bpまで削ると本来の発現部位である頭部と胸部の表皮での発現は観察されなくなるが腹部表皮での発現は残ることが判明した。以上の結果から、-408bpから-194bpの間に腹部表皮での発現を抑制する因子が作用すること、-193bpから-104bpの間に頭部と胸部表皮での発現に必要な因子が作用すること、 -103bpより下流に腹部表皮での発現にpositiveに働く因子が作用することが示唆された(図)。FTZ-F1結合部位に変異が生じた場合に、レポーター遺伝子の発現がなくなるという以前の結果と合わせて考えると、時期特異的に発現するFTZ-F1と組織特異性を規定する因子の協調作用により、EDF84Aの発現制御がおこなわれていることが予想された。 3.FTZ-F1 mutantの表現型 FTZ-F1 mutantは、2齢への脱皮ができないことが明らかになり、FTZ-F1の発現が、脱皮のために必要であると考えられた。
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