DNAポリメラーゼ種による役割分担を研究するため、各種の変異株や形態形成過程の利用の可能なショジョウバエを用いることは有意義である。私達はこの様な観点から、最近まで未発見であったショジョウバエ胚のDNAポリメラーゼδ及びε型の精製とそのモノクローナル抗体の作成を目的とした。この課題提出直前までにδ型は既に精製に成功したので、平成8年度は、精製報告のないε型(pol-ε)を中心に探索し、その胚中にpol-εが存在することを確認したので精製を進めた。ショジョウバエ胚およびその培養細胞Kcから6種の各カラムクロマトにより250kDaの活性サブユニットを有する高度精製標品を得た。その標品は、一本鎖領域の長いホモポリマーを好む鋳型特異性、高いプロセッシビティ、校正機能を示唆する3'-5'エキソヌクレアーゼ活性、数種の阻害剤特異性等の特徴を有し、哺乳動物のpol-εは酵母のpol-IIと酵素学的性質の共通点がみられた。さらにpol-εの遺伝子断片をコードするペプチドに対するポリクローナル抗体で、250kDaの位置に免疫染色される。これら諸性質よりショジョウバエにもpol-εが存在し、少なくとも5種類のDNAポリメラーゼが存在することがわかった。収率の悪さのため、polδ及びpolε共にモノクローナル抗体の作成はまだ開始していない。polεの研究成果は、1997年1月号のB.B.R.C.誌に発表した。現在、polδ及びpolεの収率の向上をはかるとともに、その遺伝子のクローニングにはいるべく末端アミノ酸配列の同定を急いでいる。そして、これらの酵素のモノクロ抗体を作成まで持っていきたい。
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