出芽酵母ミニ染色体安定保持に関与するBUL1遺伝子と相互作用する遺伝子を2-ハイブリド法により検索し、RSP5遺伝子を単離した。Rsp5蛋白のC末端側半分はヒトのE6-APと相同性を持つユビキチンライゲ-スである。E6-APはウイルスE6と共に癌抑制遺伝子P53をユビキチン化し癌化へと導く。Bull蛋白はRsp5ユビキチンライゲ-スと大きな複合体を形成しているが、パルスチェイス実験によりBull蛋白はRsp5蛋白のターゲット蛋白ではなく、調節因子と考えている。ユビキチン経路の最終ステップの複雑な基質認識と活性化調節機構の解明をめざし、まず、酵母rsp5温度感受性変異のマルチコピーサプレッサーを2種単離した。G0期に細胞が小さくなり呼吸と関連していると考えられているWHI2については、さらに、2-ハイブリド法によりWhi2と複合体を形成する蛋白の遺伝子を単離した。ゲノムデータベース検索により、相同性のある遺伝子をPCR法により単離した。これらの遺伝子破壊株は単独では表現型が観察できないが、現在、2重破壊株を作成することを試み、遺伝子産物の相互関係を明らかにする予定である。もう1種のマルチコピーサプレッサーAst1はシャペロンの様に働いているのかも知れない。さらに、Rsp5と複合体を形成しているBull蛋白がユビキチンライゲ-スの調節因子であるなら、ユビキチン化への信号伝達経路が存在するはずである。実際、bull変異株は野生株に比してクロロフォルムに耐性であった。
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