研究概要 |
本研究では、自食作用の機構解明のため、細菌毒素ストレプトリジンO(SLO)によるセミインタクト肝細胞を作成した。この系は蛋白質などの高分子物質を自由に透過させる性質を持ち、自食作用については後半の成熟段階のみを保持していることが明らかにされた。この成熟段階はATPおよびサイトゾル依存性であり、非加水分解性GTP誘導体であるGTPγSによる阻害を受けることが判明した(J.B.C.,投稿中)。以上の結果に基づき、サイトゾル中に存在が予想されるGTP結合蛋白質(GTP-BP)をはじめとする成熟段階に関わる調節蛋白質の検索を開始した。まず、サイトゾルの硫安分画から始めたが、各画分の効果に再現性がなかった。これは各画分中に微量に混入するアンモニアによる蛋白質分解阻害効果と思われ、本実験には不適切と判明した。次いで、SDS-PAGEによりサイトゾル中には19.5,23.5,25.5,26.5,28kDaと少なくとも5本の^<32>P-GTP結合活性が検出された。生理活性を追跡するためゲル濾過(Toyopearl HW55-F)を行い、各画分の^<32>P-GTP結合活性とSLO細胞での蛋白質分解促進活性を検討したところ、分子量25-30kDaに両活性の一致するフラクションが得られた。現在、さらに陰イオン交換クロマトであるPOROS HQ/M,およびRESO URSE Qなどのカラムを用いて精製を進めている。また、いわゆる低分子量GTP-BPは数多くの同族体があるので、二次元電気泳動による精製のチェックを行っている。以上とは別に、この自食作用成熟段階には膜融合ステップが存在するが、サイトゾルをN-エチルマレイミド(NEM)処理することにより明らかに蛋白質分解促進作用が失われたので、小胞輸送などで報告されているNSF様の調節蛋白質が存在することが示され、現在その精製も進行中である。
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