分泌蛋白質の品質管理機構として、構造異常蛋白質が分泌されず、小胞体内で分解されることが知られている。本研究は、薬物ワルファリンの存在下で生合成された血液凝固制御因子プロテインC (PC)の細胞内での特異的分解を詳細に解析しようとするものであり、本年は、PC発現BHK細胞を用いて細胞内の分子シャペロンとの会合と各種阻害剤の影響を調べた。 [方法と結果]1.架橋剤DSPで架橋後、エンドグレコシダーゼHで消化し、SDS-PAGEを行ったところ、100kDaと80kDaの蛋白(それぞれGRP94、GRP78)に加え、60kDaのエンドH非感受性の蛋白が検出されたが、この蛋白質はWestern blotによりカルレティキュリンであることが同定できた。2.膜結合性の分子シャペロンであるカルネキシンは、ビタミンK下、ワルファリン下、いずれのPCとも一過性に会合した。3.各種プロテアーゼ阻害剤をチェイス時に添加するとE64 (d)などER60プロテアーゼをin vitroで阻害するシステインプロテアーゼ阻害剤では、PCの分割は阻止されなかったが、プロテアソームの合成阻害剤であるZ-Leu-Leu-Leu-H、Z-Leu-Leu-Nva-H、Z-Ile-Glu (O-t-Bu) -Ala-Leu-Hによって強い分解阻害が見られ、プロテアソームの特異的阻害剤であるラクタシスチンはワルファリン下のPC分解を完全に阻止した。 [結論]ワァルファリンのためにγ-カルボキシル化を受けないPIVKA-PCには、HSP系シャペロン(GRP94、GRP78)の他に、Ca^<2+>-依存性シャペロン(カルレティキュリンとカルネキシン)が会合する。阻害のスペクトラムから分解を司るプロテアーゼとしてはプロテアソームが有力であり、分泌タンパクであるPCが小胞体から細胞質内に輸送された後に分解される可能性がある。
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