研究概要 |
アルツハイマー病(AD)の病因の一つとして、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の代謝異常によるβ/A4タンパク質(Aβ)の蓄積が考えられている。神経毒性を持ったAβによって、神経細胞が変成するというものである。このAPPの特徴的な代謝系として分泌系が存在する。以前よりの研究により、APPの分泌系は単純な水溶性プロテアーゼではなく、膜に埋め込まれた複合体であることが明らかになりつつある。このような複雑な複合体の同定は、通常の蛋白質生化学的方法では非常に困難である。そこでAPPのAβを含むC末側を発現させ、Two-hybrid法による結合タンパク質のクローニングを試みた。確実な結合の確認にはさらに実験が必要であるが、アニオントランスポーターが弱い結合を示すクローンとして得られた。このタンパク質は膜貫領域を数個もち、立体構造はpresenilinと類似している。しかし、APPとCOS細胞での共発現では、その代謝に影響を及ぼさなかった。Two-Hybrid法におけるタンパク質の結合は細胞質(核質)で行われるものであり、水溶性タンパク質の結合の検定に適している。膜タンパク質間の相互作用の検定は困難と考えられた。 家族性ADで見いだされているVal717変異はAβ42を増やすことが報告されている。そこでVal717をCys,Glu,Serなどに変異してAPPの代謝を検討した。Aβ42を増やすのは家族性ADで見いだされている変異のみだった。しかし、他の変異はα分泌に影響を及ぼした。
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