視覚対象の認知およびそれに対する主観的注意に関連して活動を示すとヒト脳の巨視的神経回路を明らかにすることが本研究の目的である。 右利き若年者正常男性7名を対象とし、局所脳血流量をポジトロンCT装置を用いて計測した。課題遂行中は画面中央に表示した固視点を常に見つめているように被験者に指示をした。まずサンプル刺激として白黒のWalshパターンを固視点の両側に固視点から12.5度離れた位置に250msec呈示した。1000から4000secの遅延期間後、テスト刺激として白青のパターンを同じ位置に250msec呈示し、500から1500msecのインターバル後同じシークエンスを繰り返した。右注意課題では右視野に呈示されたサンプル刺激とテスト刺激が同一のパターンであれば右手のボタンを押して合図をするように指示をした。左注意課題では左視野に呈示されたパターンで同じことを行わせた。コントロール課題ではサンプル課題2回呈示につき一回ボタンを押すように指示をした。PET画像より局所脳血流画像を計算し、コンピュータ化脳図譜システムを利用して局所脳血流画像を解剖学的に標準化したのち、各注意課題引くコントロール課題の差分画像を作製、有意な変化を同定した。 右注意課題では右半球前頭前野など17の領域に、左注意課題では左半球前頭前野など16の領域に有意な活動を認めた。左半球の下側頭溝内、右半球の頭頂間溝内に双方の課題で有意な活動を示す領域が認められた。 本研究では、どちらの半球の一次視覚野に入ったパターン刺激でも遅延見本課題を遂行するときに左半球の下側頭溝領野が視覚情報処理系として機能するという半球機能差の存在が明らかになった。また右半球の頭頂間溝皮質内の領域はposterior attentional systemとして、辺縁視野への注意機構に関連することが示唆された。
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