DNA組換えと組換え修復の普遍的機構

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08280102
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 品川 日出夫 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40029799)
• 研究分担者: 大坪 栄一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (10158800) ; 堀内 嵩 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (60108644) ; 武田 俊一 京都大学, 医学部, 教授 (60188191) ; 小川 智子 国立遺伝学研究所, 教授 (80028208) ; 森田 隆 大阪市立大学, 医学部, 教授 (70150349)
• キーワード: 相同的DNA組換え / 組換え修復 / 減数分裂 / RuvABC / Mre11 / Rad54 / DNA複製フォーク / 接合伝達

研究概要

DNA組換えと組換え修復の機構を解明するために、大腸菌、酵母、動物などを対象に組換え機構の普遍性に注目して研究を展開した。
本年度の主要な研究成果として:
1. 品川らは相同組換えの中間体Holliday構造に特異的に作用して、交叉点移動を行わせるタンパク質RuvAとRuvBおよびHolliday交叉点を解離させるエンドヌクレアーゼRuvCの反応機構を解明させるために多数のミュータントを作成し、それらの表現型とミュータントタンパク質の生化学的性質を解析して、反応に重要なアミノ酸の同定と役割を明らかにした。
2. 小川らは真核生物の相同組換えの前期過程に重要な役割を果たすMre11タンパク質がRad50,Xrs2と複合体を形成し、組換え反応において二重鎖切断の形成とそのプロセッシングに関与することを明らかにした。
3. 森田らは減数分裂期組換えに関与するDmc1遺伝子のノックアウトマウスを作成して、このマウスが減数分裂期に相同染色体がペアを作れなくなって、生殖細胞がアポトーシスをおこして死んで不稔になることを明らかにした。
4. 武田らはニワトリのBリンパ細胞を用いてRad54とKu70遺伝子のノックアウト細胞を形成し、二重鎖切断の修復に前者が相同組換えによって、後者が末端再結合によって関与し、両者ともに修復に重要であることを示した。
5. 堀内らは出芽酵母のリボゾウムDNAのリピートがRNAポリメラーゼのミュータントで減少し、野性型遺伝子の導入で元で回復することを発見した。このリボゾームDNAリピートの減少と復元にDNA複製フォークの進行阻害に関与するFOB1遺伝子の機能が必要であることを証明した。

研究成果

• [文献書誌] Ichiyanagi,K.,et al.and Shinagawa,H.: "Mutational analysis on structure-function relationship of a Holliday junction specific endonuclease RuvC." Genes to Cells. 3(9). 575-586 (1998)
• [文献書誌] Yoshida,K.,et al.and Morita.T.: "The mouse RecA-like gene Dmcl is required for homologous chromosome synapsis during meiosis." Molecular Cell. 1(5). 707-718 (1998)
• [文献書誌] Usui,T.,et al.and Ogawa.T.: "Complex formation and functional versatility of Mrell of budding yeast in recombination." Cell. 95(5). 705-716 (1998)
• [文献書誌] Takata.M.,et al.and Takeda.S.: "Homologous recombination and non-homologous end-joining pathways of DNA double-strand break repair have overlapping roles in the maintenance of chromosomal integrity in vertebrate cells." The EMBO Journal. 17(18). 5497-5508 (1998)
• [文献書誌] Kobayashi,T.,et al. and Horiuchi,T.: "Expansion and contraction of ribosomal DNA repeats in Saccharomyces cerevisiae: requirement of replication fork blocking(Fob1)protein and the role of RNA polymerase I." Genes and Development. 12(24). 3821-3830 (1998)
• [文献書誌] Taki,K.,Abo,T.and Ohtsubo.E.: "Regulatory mechanisms in expression of the traY-I operon of sex factor plasmid R100: involment of traJ and traY gene products." Genes to Cells.3(6). 331-345 (1998)