研究課題/領域番号 |
08280212
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
立花 章 京都大学, 放射線生物研究センター, 助手 (20188262)
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研究分担者 |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
江島 洋介 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (50127057)
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キーワード | アタキシア・テランジェクタシア / 欠失突然変異 / 2本鎖切断修復 |
研究概要 |
DNA2本鎖切断は、染色体異常、突然変異、細胞死などにおいて重要な役割を果たすDNA損傷である。我々は、DNA2本鎖切断の再結合反応を試験管内で行い、再結合反応の効率及び正確度を解析する実験系を確立した。 プラスミドpZEr-O-2は、大腸菌に対して致死作用を示すccdB遺伝子をlac遺伝子プロモーターの下流に結合した配列を含んでいる。ccdB遺伝子内でこのプラスミドを1箇所だけ切断する制限酵素を用いてプラスミドDNAを線状にし、これに培養細胞から得た核抽出液を加えて再結合反応を行わせる。このDNAを大腸菌に導入し、生じたコロニー数から再結合反応の効率を検討する。さらに、野生型ccdB遺伝子を持つプラスミドを取り込んだ大腸菌はIPTGを含む寒天倍地上でコロニーを形成しないが、再結合の誤りによってccdB遺伝子に変異を生じたプラスミドを取り込んだ大腸菌はコロニーを形成するため、再結合反応の正確度の測定と変異プラスミドの選択が容易である。 正常人由来N2KYSV細胞の核抽出液を用いて検討したところ、2本鎖切断の切断配列或いはその部位によって再結合の正確度に差異があることが明らかとなった。アタキシア・テランジェクタシア(AT)患者由来線維芽細胞株AT2KYSVの核抽出液は、N2KYSVよりも変異頻度が高く、AT細胞では再結合反応の正確度が低く、かつ正常細胞による変異体とは明らかに異なる変異スペクトルを示すことから、AT細胞での2本鎖切断修復過程に何らかの異常があることが明らかになった。また、変異プラスミドでは数塩基対の短い反復配列の部位の間で欠失突然変異が生じていたが、これは細胞内の遺伝子に生じる欠失突然変異の特徴と類似していることから、この試験管内反応は細胞内の欠失突然変異の機構を反映しているものと考えられる。
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