研究概要 |
(1)堀井は,熱帯熱マラリア原虫のレコンビナントSERA蛋白(SE47)で免疫したリスザルで感染実験を行った結果,原虫感染率の低下と免疫後の血清のin vitro培養における増殖阻害が認められたこと、および、免疫群のリスザル4匹のなかでも2匹のリスザルについては熱帯熱マラリア原虫の感染後に、レコンビナントSE47′蛋白質に対する抗体価が顕著に増加し、これらのリスザルにおいてはマラリア原虫の増殖が他のすべてのリスザルに比べて強く抑制されたことから、同蛋白がマラリアワクチン候補として十分期待できるものであることを示した。(2)田辺は,ベトナムの熱帯熱マラリア原虫の分離株を用いて,メロゾイト表面蛋白(MSP-1)遺伝子の遺伝的多型の中心である組換えが5′側のブロック3-5に限られること,MSP-1対立遺伝子の分布に有意な地域差は認められないこと,サブユニットワクチンとして注目されているMSP-1のC末端側の遺伝子の変異がフィールド株間で少ないことを明らかにした。(3)鳥居は,単クローン抗体を用いて,ネズミマラリアのP.yoeliiおよびP.bergheiのメロゾイトのロプトリ-に熱帯熱マラリア原虫と類似の140/130/100kDの蛋白が局在することを示した。この蛋白の部分アミノ酸配列を決定し,これを基に100kDの蛋白遺伝子の塩基配列のを解析中である。(4)神原は,P.yoeliiのMSP-1遺伝子を抗酸菌のα抗原遺伝子に挿入して融合蛋白として発現させ、BCGのアジュバント効果を利用したワクチン開発をめざして研究を進めている。組み替えBCG投与により誘導される感染防御は細胞性免疫が主役であることを示唆する結果を得た。(5)松岡は、より有効なワクチンを作成するためには、原虫蛋白と同様の立体構造をもつ組み替え蛋白を作成できる発現系を用いるべきとの観点から、MSP-1とオ-キネート表面蛋白のPfs25とをバキュロウイルス-カイコ系を用いた発現・精製を行った。
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