本年度は、熱帯熱マラリア原虫のSer/Thr残基に結合した糖鎖について検討した。緩和なヒドラジン分解によって糖鎖を遊離させた後、2-aminobenzamido(2-AB)によって蛍光標識した。この蛍光標識オリゴ糖の混合物を、まずMono Qを用いた陰イオン交換カラムにより分画した。陰性荷電を持つ吸着画分と荷電を持たない非吸着画分に分画した。吸着画分を回収後シアリダーゼで処理して、非還元末端のシアル酸をはずし、再び陰イオン交換カラムにて分画した。この際に、非吸着画分として回収されたオリゴ酸を、Superdex-peptideを用いたゲル濾過カラムにて分画したところ、溶出位置が単糖よりさらに遅れるいくつかの画分が得られた。今までにこのような性質をもつ糖鎖の報告はなく、原虫に特異的な新規糖鎖が存在する可能性が示唆された。更に、これらの画分の一つを塩酸にて加水分解し、還元末端糖を調べたところ、マンノースであることが明らかとなった。質量分析計によりシアル酸を除いた分子量を求めると、約550と推定された。マラリア原虫糖タンパク質糖鎖についての詳細は、いまだ不明である。本研究によりマラリア原虫特異的な新規糖鎖が存在する可能性が示唆されたことから、まず早急にその全構造を明らかにしたい。次の段階として、その糖鎖の原虫における生合成経路を解明したい。生合成経路が解明できれば、この糖鎖特異的な生合成阻害剤の開発も視野に入ってこよう。また、これら糖鎖に対する抗体の作成も検討課題として取り上げ、原虫の赤血球感染時における糖鎖の役割の解明、及びこの糖鎖の原虫での機能を解明したい。
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