研究概要 |
1)IL-6による増殖、分化におけるStat3の生理的役割。IL-6のシグナル生成を担うgp130分子の機能ドメイン解析および優性抑制型Stat3を用いた解析により、Stat伝達系ばかりでなく種々のIL-6細胞内シグナルの役割を明らかにできるようになった。IL-6によりマクロファージに分化する細胞株M1においては、gp130の細胞内ドメイン近位部の133アミノ酸があれば、増殖停止、マクロファージへの分化、c-myb,c-myc発現抑制、junB,IRF1発現誘導、Stat3の活性化のすべての応答が認められたが、変異gp130を用いた実験から、Stat3の活性化とegr-1発現誘導を除くすべてのIL-6応答とが密接に関係することを示した。優性抑制型Stat3発現M1細胞株を用いた実験から、Stat3の活性化が、IL-6によるG1期での増殖停止、マクロファージへの最終分化、c-myb,c-mycの抑制に重要であるばかりでなく、Stat3がgp130の第2チロシン残基を含む領域に由来する増殖に向かうシグナルを負に制御していることを明らかにした。次にGCSFRとのキメラgp130受容体をIL-3依存性細胞株BaFに導入し、増殖、生存に必須なシグナルを解析した。細胞増殖には、gp130の第2チロシン残基に由来するシグナルと活性化されたStat3がともに必須であること、第2チロシンに由来するシグナル(おそらくSHP2-RAS-MARK)が細胞周期の進行に作用し、第3-6チロシンに由来するStat3がIL-3除去に伴うアポトーシスを阻害する役割をもつことを見い出した。2)Jak1のキナーゼ様ドメイン(JH2)に結合するものとしてStat5C末をクローニングした。Stat5がgp130のチロシンの有無にかかわらず活性化された際には、Jak1JH2-Stat5の直接の相互作用が重要であるとの結果を得た。
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