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1998 年度 実績報告書

近代国家における文化的アイデンティティとしての芸術

研究課題

研究課題/領域番号 08301004
研究機関京都造形芸術大学

研究代表者

金澤 弘  京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20000359)

研究分担者 井上 明彦  京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (30232523)
並木 誠士  京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授
古田 真一  帝塚山学院大学, 文学部, 助教授
羽生 清  京都芸術短期大学, 造形芸術学科, 教授 (30183560)
木下 長宏  横浜国立大学, 教育人間学部, 教授 (60125193)
キーワード国民国家 / 芸術 / 岡倉天心 / 夏目漱石 / 美術館 / 小説 / 衣装 / 明治
研究概要

今年度は研究の取りまとめが中心的な作業となった。これまでの各研究分担者の報告と討論を経て、自国民のアイデンティティ確保の体系を整えていった近代の諸国家が、自己目的的な有機体としての国家のイデオロギーを創出するために有機体の概念を芸術制度に対しても適用したというだけでなく、実のところ近代的自意識そのものが元来芸術作品を範型として考えられたことが確認された。また、研究者自身の用いる言説が我が国の明治以降の芸術制度の直中にある事が指摘され、成果報告書の構成もそれについて自覚的な形をとることが決められた。
文化的アイデンティティとしての芸術は、二つの方向にその役割を分岐させた。例えば岡倉天心の活動において見られるように国民国家の自己顕示的な制度としても機能するが、このような国粋主義は欧米諸国に伍すという国際化と表裏をなしていた。また他方では、やはり西欧化への一つの反動として、日本固有のという、これもまた人為的な自己を保持するための拠り所ともなった。それが夏目漱石の場合である。
しかしまさにこの時、芸術に対する歴史的な態度が普及していき、その近代的な考え方にもう一つの観点を付け加えることになった。それによれば芸術はもはや自分以外の何者の有機体のモニュメントでもなくなり、芸術についての自律的学問に博物館学的資料を提供する領域となる。またそれと同時に、国家的アイデンティティの方も、芸術の領域以外のところ、とりわけマス・コミュニケーションのうちに次第に有効性を見出していったのである。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (3件)

  • [文献書誌] 金澤弘: "初期水墨画の精神性" 根津美術館学芸部編「墨の彩」. 93-98 (1998)

  • [文献書誌] 並木誠士: "日本美術史形成期の研究(1)『稿本日本帝国美術略史』の作品選択と記述" 京都工芸繊維大学工芸学部研究報告「人文」. 47. 137-162 (1999)

  • [文献書誌] 並木誠士: "文化財保護とミューゼオロジー-日本の場合-" 太田喬夫編「芸術学を学ぶ人のために」. 255-268 (1993)

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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