研究概要 |
1.障害の受容・喪失体験の心理過程に関係する要因と心理療法的援助の方法を検討するために,2つの調査研究をおこなった. 調査I:喪失体験を有する成人(年齢45〜80歳)122名を対象に調査を実施した.その結果,(1)喪失した人との生前の関係(親密さの程度など)が後の心理過程に大きな影響を与える,(2)家族や友人などの社会的サポート,(3)時間の経過,(4)本人のパーソナリティー要因などが喪失体験からの回復の大きな要因であることが明らかにされた. 調査II:障害者8例(30〜38歳)に対して面接調査をおこなったところ,(1)本人の障害の認知のレベル,(2)障害に対する本人の積極的なとりくみ,(3)環境の整備(家族や友人のサポート,物理的・社会的制度の改善)などが障害受容にとって重要であることが示唆された. 2.震災による喪失体験者の心理療法的援助の方法を比較検討するために,EMDRとリラックス法,セルフ・ヘルプグループ法による比較をおこなった.そして, 1)EMDRによる面接は比較的短期間(1回,90分の治療的介入)で恐怖感が消失するなど有効であり,他の方法(再体験・再処理など)に比べて副作用が少ないという特徴があること. 2)リラックス法(動作法)は,一般的に疲労の蓄積には有効であるが,弛緩はかなり困難であるなどのデータを得た. 3)セルフ・ヘルプグループ法は,5名の女性を対象に10回実施されたが,同じ体験をした人との出会い,語りの場が設けられることが,体験者に深い共感と絆をもたらしていることが確認された.
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