鹿児島県大島郡瀬戸内町に属する離島地域には、現在31の集落がある(加計呂麻島28、諸島2、与路島1)が、このうち与路島を除く30の集落にはいった。一次調査を終えて、すでに二次、三次の調査をしている集落もいくつかある。聞き取り調査の対象者は80人近くになっている。 聞き取りの内容は、集落の聖地、ノロ祭祀の概要、ノロに関わる伝承、ノロ以外の信仰、年中行事、などが主で、冬季には神山とされる山中の探索も数ケ所か行った。冬季に行うのはハブを避けるためである。 調査報告の作成は3年度目の平成10年度に計画しているが、現時点で確認しうるのはおおよそ以下である。(1)この地域全域ですでにノロ祭祀は断絶している。現行の2集落は、一旦途絶えた後の民間坐者たちによる疑似的復活である。(2)断絶の時期は明治期から大戦後までさまざまだが、新生活運動と新興宗教が断絶の2大要因をなしている。(3)聖地の配置には共通した枠があるものの、細部にはかなりの変化が見られる。(4)祭場を2つ持つ集落がいくつかある。(5)複数の集落に共通の神山がいくつかあって、かなり重要に意味を持っている。(6)従来は旧実久村(西側)の報告しかなかったが、旧鎮西村でもノロ祭祀があったことが確認された。(7)日本本土の神社信仰がどこでも必ず導入されている。(8)これがノロ信仰と融合したり、反発しあったりしている。(9)従来指摘されている集落の双分構造は、多くの集落で明瞭には出てこない。 次年度はこうした所見の確認作業や修正をしながら、調査を継続する予定である。
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