研究概要 |
本共同研究は,明治期に日本に受容された「社会主義」思想の特色とその影響について,比較思想史的に,また地域拡散化の過程を実証的に検証することを課題としている. 具体的な課題としては,1903年幸徳秋水,堺利彦によって結成された平民社の活動が,週刊「平民新聞」,平民文庫の刊行,あるいは「伝道行商」などによって,全国レベルにおいて読書会の結成を促し,そこを拠点とする啓豪活動へと発展する過程を解明することである.この点に関する本年度の成果としては,「近代日本社会運動史人物大事典」(日外アソシエ-ツ,1997.1)の刊行への参加をあげることができる。山泉が編集委員として加わり,上村,太田,田中,萩野,岡崎が執筆した.「平民社」関係者を中心として,約1300名の割出しと執筆に係わった. 第2の課題として掲げたのは,岩崎革也文書の解読であった.岩崎革也は,京都府須知の銀行家で,近年,太田,田中,山泉により調査がなされた約500通の書簡の解読である.幸徳秋水,堺利彦,高畠素之,西川光二郎,北一輝らの書簡を,東京では山泉,京都では田中が中心となり作業をすすめている.とりわけ,北の書簡は明治40-42年にかけての,社会主義者や中国人革命家たちとの交流について,新資料を提供している. 加えて,共同研究者が参加している初期社会主義研究会の機関雑誌「初期社会主義研究」第9号に,杉原,太田,山泉,岡崎,梅森らが論文を発表した.とりわ,杉原は河上肇とミルを,山泉は安部磯雄とベラミ-について比較思想史的考察をおこなった.
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