研究課題/領域番号 |
08301040
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 総合 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川合 康三 京都大学, 文学研究科, 教授 (40108965)
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研究分担者 |
釜谷 武志 神戸大学, 文学部, 助教授 (30152838)
和田 英信 信州大学, 人文学部, 助教授 (20231037)
西上 勝 山形大学, 人文学部, 助教授 (10189277)
乾 源俊 高知大学, 人文学部, 助教授 (00203216)
興膳 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (70023984)
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キーワード | 中国文学史 / 文学史観 / 古城貞吉 / 藤田豊八 / 下陽史観 / 古文家 / 沈約 / 古と今 |
研究概要 |
『中国文学史』という書物が書かれるようになってちょうど百年になる今、近代の産物としての文学史は、そのままでは現代に対応できない状況に至っている。そのためか、西欧においても文学史観そのものが論議され、中国においても中国文学史の見直しを求める研究プロジェクトが始まっているように、我々の着手した研究テーマは、はなはだ現代的な問題であることが分かった。近代の中国文学史は中国よりも早く日本において書かれ始めたが、明治期の中国文学史を網羅的に調査することを通して、以下のことが新たに明らかになった。まず日本で最初に書かれたことには確かに西欧の文学史の影響を受けて、対象を中国に移して試みたものであること。それは伝統的な中国学が西欧の学術の感化を受けて近代的な学問として再生した当時の全体的な状況の中から生まれたこと。初期の中国文学史において小説・戯曲といった俗文学は軽視されたと従来考えられていたことは正しくなく、新しい領域として強い関心を注いでいるものの、まだ十分な読解が及ばないために記述されなかったに過ぎないこと、など。また数多くの中国文学史の中でも、藤田豊八のそれは訓読による読み方の不十分さを初めて指摘したり、世界の文学の一つとして中国の文学の自立した価値を認めるなど、とりわけ大きな意義をもつことが明らかになった。近代以前の中国においても文学史的思考は存在するが、文学論の中に断片的に記述されるそれを分析することによって、中国独特の文学史観のありさまも分析が加えられつつある。それは時代を越えて一貫する性格が見られる一方、時代ごとの政治的要求から文学史観が生み出される面も確認された。今後はさらにそれぞれの時代の文学観との関わりの中で、文学史観の様相を探究していく予定である。
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