研究課題/領域番号 |
08301040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川合 康三 京都大学, 文学研究科, 教授 (40108965)
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研究分担者 |
釜谷 武志 神戸大学, 文学部, 助教授 (30152838)
西上 勝 山形大学, 人文学部, 助教授 (10189277)
乾 源俊 高知大学, 人文学部, 助教授 (00203216)
浅見 洋二 大阪大学, 文学部, 助教授 (70184158)
興膳 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (70023984)
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キーワード | 文学史 / 文学史観 / 中国文学史 / 系譜 / 詩話 / 宋書謝霊運伝論 / 漢官芸文志 / 古今 |
研究概要 |
平成10年度の研究では、以下のような成果があった。 1 明治期における中国文学史:明治期に日本で刊行された中国文学史の調査を継続し、コンピューターに入力して作成されたデータベースをもとに、個々の中国文学史、及びその著者について探求を深めた。中国文学史の著作においては、当時の思想を反映して、文学史の把握においても環境決定論的な思考が色濃くあらわれていることが、各種の文学史を通して共通していることが認められ、それは或る種の時代の制約といってよいが、しかしながら著者はいずれも若年でありながら、その該博な知識は今日驚嘆すべきものがある。なかでも藤田豊八の文学史は著者の個性が最も顕著である。他の大方は西欧の優勢に抗して東洋、の価値を力説するところから出発するのに対して、藤田はその時期において中国文学を世界の文学の一つとして位置づけている。また訓読による弊害に言及しているところも、時代を先取りしているといえる。またそれぞれの著者の経歴を調べる過程から、明治期の文化人の幅広い行動、交遊の実態が浮かび上がってきたことも、思いがけない副産物であった。こうして調査された明治期の中国文学史については、報告書としてまとめる作業が行われた。 2 文学の変化のなかに探る文学史:過去において文学史として記述された書物はもちろんないが、文学作品そのものの展開を通して、そこに文学史的な展開の跡を検証するという研究も行われた。たとえば蝉を唱った詩の系譜は延々と途絶えることなく続くが、詩のなかで用いられる蝉の意味は変わらないのにそれを唱った詩自体は時代に応じて変容していく過程が明らかにされた。こうした文学の系譜をたどる作業は今後さらに様々な事例において試みられるべきであろう。
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