太陽フレアにおけるエネルギー解放・粒子加速機構と磁気リコネクション

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08304021
• 研究機関: 国立天文台
• 研究代表者: 小杉 健郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (70107473)
• 研究分担者: 坂井 純一 富山大学, 工学部, 教授 (50019220) ; 増田 智 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10262916) ; 柴田 一成 国立天文台, 太陽物理学研究系, 助教授 (70144178) ; 常田 佐久 国立天文台, 太陽物理学研究系, 教授 (50188603) ; 内田 豊 東京理科大学, 理学部, 教授 (90012814)
• キーワード: 太陽フレア / 太陽X線放射 / 粒子加速 / 磁気リコネクション / 太陽電波放射

研究概要

科学衛星「ようこう」のX線観測を、地上及びスペースからの種々の観測結果と結び付けて、太陽フレアにおけるエネルギー解放・粒子加速機構を磁気リコネクション過程として統一的に解明する研究を総合的に推進した。主な成果は下記のとおり。
(1)[ようこう」の硬・軟両X線望遠鏡の撮像データを詳細に比較し、インパルシヴ・フレアの軟X線ループ構造の上空に「超高温」及び「高温」の2種類のプラズマが存在することを発見し、これがリコネクション・ジェットの終端衝撃波による粒子加速/加熱の結果として解釈できることを示した。
(2)「ようこう」の撮像データとコンプトンγ線天文衛星(CGRO)の高時間分解能X線/γ線スペクトル観測を比較し、CGROで観測される硬X線を放射する高エネルギー電子が生成される場所は軟X線ループの上空であること、加速されたのち一部の電子は磁気ループにトラップされていることを見つけた。
(3)「ようこう」のX線撮像観測と野辺山電波へリオグラフによるマイクロ波撮像観測の比較により、太陽フレア発生には複数の磁気ループが関与していることを発見した。
(4)これらの観測結果を基に、リコネクションと粒子加速のモデルを発展させた。
また、太陽フレアに関連したさまざまなコロナ中の現象、例えばX線ジェットやX線輝点、CMEなどの研究も、米・欧のSOHO衛星と共同で推進した。
本科研費により、大型の国内シンポジウムを開催し、これまでの成果と今後の課題について討論した。

研究成果

• [文献書誌] S.Tsuneta, S.Masuda, 他: "Hot and Super-Hot Plasmas above an Impulsive-Flare Loop" Astrophys.J.478. 787-798 (1997)
• [文献書誌] B.V.Somov and T.Kosugi: "Collisionless Reconnection and High-Energy Particle Acceleration in Solar Flares" Astrophys.J.485. 859-868 (1997)
• [文献書誌] M.J.Aschwanden, 他: "Electron Trapping Times and Trap Densities in Solar Flare Loops Measured with Compton Gamma-Ray Observatory and Yohkoh" Astrophys.J.487. 936-955 (1997)
• [文献書誌] K.Hori, T.Yokoyama, 他: "Pseudo-Two-Dimensional Hydrodynamic Modeling of Solar Flare Loops" Astrophys.J.489. 426-441 (1997)
• [文献書誌] N.Nishio, K.Yaji, 他: "Magnetic Field Configuration in Impulsive Solar Flares Inferred from Coaligned Microwave/X-ray Images" Astrophys.J.489. 976-991 (1997)
• [文献書誌] T.Kosugi and K.Shibata: "Solar Coronal Dynamics and Flares as a Cause of Interplanetary Disturbances" “Magnetic Storms"(Geophysical Monograph 98,AGU). 21-34 (1997)
• [文献書誌] T.Watanabe, 他(編著): "Observational Plasma Astrophysics" Kluwer Academic Publ., 500 (1998)