研究分担者 |
徳永 幸彦 筑波大学, 生物科学系, 講師 (90237074)
牧 雅之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60263985)
鈴木 和雄 山口県立大学, 生活科学部, 教授 (50187712)
加藤 真 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80204494)
大串 隆之 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10203746)
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研究概要 |
サクラソウの野生個体群のおよそ200個体、約800花についてマルハナバチ女王の関与による受粉および種子生産を解析し、送粉昆虫の利用性や花の形質が繁殖成功に及ぼす影響をパス分析法で解析した。和合性のある花粉の受粉量は長花柱型の方が約3倍多く,モルフ間の形態の違いが受粉の段階での適応度成分に与える顕著な影響が認められた。この自生地ではマルハナバチの訪花は十分であり、爪跡で評価した「訪花」の有無は適応度成分に有意な効果はもたらしていなかった。しかし、ほとんどの花で種子生産に十分な受粉が認められた長花柱モルフでは,柱頭の高さと受粉や種子生産との間に有意な関係はみられないのに対して,概して受粉量の少なかった短花柱モルフでは,柱頭が高いものほど和合性のある花粉の受粉量が大きく種子生産も大きいという、繁殖器官の位置の効果が示された。短花柱モルフで柱頭を高くする方向への選択圧が明瞭なのは,筒形花冠では,花筒のより深い位置にある柱頭ではその僅かな高さの違いによって送粉者との接触の程度が変化するためであると解釈された。 一方、網室を用いた小規模なポリネータセラピーの実験では、昨年度に引き続き、トラマルハナバチの女王は非常に効率のよいポリネーターであり、花粉の持ち越し量も十分なため、1頭でシーズン中に数万から数十万の花に適法授粉をもたらす可能性が示された。
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