高柔軟・高信頼電気エネルギー流通システムに関する基礎研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08305008
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 長谷川 淳 北海道大学, 大学院工学研究科, 教授 (40001797)
• 研究分担者: 大山 力 横浜国立大学, 工学部, 教授 (40160642) ; 奈良 宏一 茨城大学, 工学部, 教授 (80113710) ; 辻 毅一郎 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (30029342)
• キーワード: FRIENDS / マルチメニューサービス / 電力改質センター / 無停電電力供給 / 電力品質 / 信頼度 / 電力流通システム / 配電システム

研究概要

1. マルチメニューサービスを実現するための電力改質センターの構成
FRIENDSの中核的存在である電力改質センター(QCC)には、様々な内部構成が考えられ得る。本年度は、昨年度に提案したQCCの内部構成をベースとし、より詳細な内部構成モデルを提案し、マルチメニューサービスの観点から、その内部構成モデルに対し、電磁過渡解析プログラム(EMTDC)を用いて瞬時値解析を行い、提案した内部構成の持つ特徴を明らかにした。また、QCCで構成されるる配電ネットワークの系統構成変更時における静止型開閉器等の運用・制御方策を開発した。
2. マルチメニューサービスの需要量の評価と電力改質センターのハードウェア構成
平成10年度は、他のプロジェクト研究で得られた住宅におけるエネルギー需要の計測調査の結果を用いて、先に開発したボトムアップシミュレーションモデルの精度の検証を行った。その結果、本モデルの有効性が確認でき、冷房・暖房需要の無い中間期の電力需要に関しては、モデルによる用途別需要の再現ができる見通しとなった。一方、本年度は電力改質センターの具体的な回路構成について研究を進め、半導体を用いた切り替えスイッチの実験による特性評価、ならびに品質別電力供給を経済的に実現し得る方式として提案した、三相四線式交流多品質電源の基本的特性のシミュレーションによる検証を行い、それぞれ所期の結果を得た。
3. 需要端分散電源を考慮した開閉器操作手法の開発と最適系統構成手法の洗練化
FRIENDSの系統構成とその事故時・補修時運用に関する以下の2項目についてアルゴリズムの開発を行い、研究成果を国内外の学会で発表した。
(1) 事故時や補修時にも負荷への電力供給が可能なように、柔軟に系統構成を変更するための需要端分散電源の運用と開閉器操作を決定する感度解析を用いたアルゴリズムを開発した。
(2) 前年度までに開発した需要端分散電源を考慮したタブー探索による系統構成決定アルゴリズムに、さらに、2重事故時においても負荷に電力を供給可能なように最適な系統運用を決定するアルゴリズムを加え、事故時運用も考慮した最小コスト系統構成を探索可能なように改良した。
4. デマンドサイドから見たFRIENDSのあり方についての評価
開発した需要家の行動モデルを用いて、小売り託送市場で社会全体として望ましい状況となるためにはどのような送電線使用料とすればよいかについて検討を行った。その結果、各地域の新規参入事業者が互いに価格競争を行うような送電線使用料の設定を行えばよいということが分かった。ただし、この送電線使用料の設定では新規参入事業者にとって利潤があまり望めなくなる厳しい状況となるため、適用に当たっては注意が必要である。

研究成果

• [文献書誌] 三島 裕樹: "高柔軟・高信頼電気エネルギー流通システム(FRIENDS)における電力改質センターの内部構成の一提案" 電気学会論文誌 B. 118-B,11. 1292-1301 (1998)
• [文献書誌] Zheng Yan: "A Modified Implicit Z-Matrix Method for Power Flow Study of Advanced Distribution System" 電気学会論文誌 B. 118-B,5. 527-532 (1998)
• [文献書誌] Kiichiro Tsuji: "Flexible, Reliable and Intelligent Electric Energy Delivery System : Concept and Perspectives" The 61st American Power Conference. (発表予定). (1999)
• [文献書誌] Yuji Mishima: "Roles of Energy Storages in Future Electric Power Delivery System" Proc.of the International Conference on Electrical Energy Storage Systems Applications & Technologies. 1998. (279-284)
• [文献書誌] Yuji Mishima: "A Proposal of Interior Structure of Quality Control Center in the FRIENDS" Proc.of the International Conference on Electrical Engineering (ICEE'98). Vol.2. 346-349 (1998)
• [文献書誌] Jun Hasegawa: "Operational Simulation of Flexible and Intelligent Electrical Energy Delivery System Using PSCAD/EMTDC" The 61st American Power Conference. (発表予定). (1999)
• [文献書誌] Yuji Mishima: "Analysis of Quality Control Center in Flexible, Reliable and Intelligent Electric Energy Delivery System (FRIENS)" The 13th Power Systems Computation Conference. (発表予定). (1999)
• [文献書誌] Toshifumi Ise: "Flexible, Reliable and Intelligent Electric Energy Delivery System : Configuration of Quality Control Center" The 61st American Power Conference. (発表予定). (1999)
• [文献書誌] Koichi Nara: "Network Configuration Study of FRIENDS from a View Point of Service Reliability" Proc.of the International Conference on Electrical Engineering (ICEE'98). Vol.II. 281-284 (1998)
• [文献書誌] Koichi Nara: "Reliable Electrical Power Supply by DGS for Unbundled Power Quality Services" Proc.of International Conference on Energy Management and Power Delivery (EHPD'98). 11-16 (1998)
• [文献書誌] Tsutomu Oyama: "Demand Side Prospects of Multiple Menu Service in Power System with the Quality Control Center" Proc.of IEEE Power Engineering Society 1999 Winter Meeting. 422-426 (1999)
• [文献書誌] 三島 裕樹: "FRIENDSにおける電力改質センターの解析-電力品質制御方式の検討-" 電気学会 電力技術・電力系統技術合同研究会資料. 12-14 (1998)
• [文献書誌] 川本 哲郎: "FRIENDSにおけるネットワーク機能に関する基礎検討" 電気学会 電力系統技術研究会資料. 1-6 (1999)
• [文献書誌] 高見 正和: "半導体スイッチによる三相系統の無瞬断切り替え制御方式と実験結果" 電気学会 電力技術・電力系統技術合同研究会資料. 55-60 (1998)
• [文献書誌] 鈴東 新: "住宅におけるエネルギー需要の計測と分析" 第15回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集. 14-2. 471-476 (1999)
• [文献書誌] 奈良 宏一: "供給信頼度を考慮したFRIENDSの最適運用決定手法" 電気学会 電力技術・電力系統技術合同研究会資料. 13-18 (1998)