研究分担者 |
山辺 信一 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (00109117)
友田 修司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30092282)
首籐 紘一 東京大学, 薬学部, 教授 (50012612)
榊 茂好 熊本大学, 工学部, 教授 (20094013)
稲垣 都士 岐阜大学, 工学部, 教授 (10108061)
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研究概要 |
本研究は,Frontier軌道理論の基本概念を踏襲しながら,現代化学の精緻な諸問題をとり扱うことができる新しい軌道理論の構築を目的としている。精密な数値計算の結果から化学の研究に真に有用な情報をとり出すための簡便な理論的手法の導出,簡略化したモデル系について理解した結果を複雑な実現系に応用して,反応にける種々の選択性を支配する因子を解明・評価するための理論的手法の開発を実験,理論の両面から検討した。 本年度の研究成果の代表的なものをあげると,(1)化学相互作用の局所性を表現する相互作用軌道対の方法を発展させ,アリル金属化合物の反応性がある空間方向に特異的であり,実験事実が中心金属のルイス酸性を評価することにより説明できることが示した。(2)トロポンとケテン類の反応が、従来から考えてきたような[8+2]型の協奏的付加ではなく,[2+2]型の付加環化から[1,7]転移を経由しておこる反応であることを明らかにした。(3)ジェミナル位にある二つのσ結合間の電子の非局在化を考慮することにより,ビシクロ[1.1.0]ブタンの橋頭位炭素の四面体配置の反転できることを示した。(4)平面4配位白金(II)錯体cis-[Pt(YH_3)_2(PH_3)_2](Y=Sn,Si,C)の単分子異性化反応について非経験的分子軌道計算を行い,安定構造と遷移状態を求めることにより,初めてその反応経路を明らかにした。(5)カルボキシル基やオレフィン二重結合のπ軌道を非対称化する分子の立体的環境に由来する反応の面選択性について考察し,実験結果を説明するとともに,これを拡張して新しい軌道立体効果の考えを提案した。
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