研究課題
1. 昆虫ウイルスの原子間力顕微鏡による観察を目的とし、核多角体病ウイルスを材料とし、試料の作製法について検討した。多角体の場合には、ガラス上にアルカリ溶液を塗り、そこに乾燥多角体を添加し付着させる方法で、また多角体中の埋包ウイルスは、多角体をガラス上で溶解・乾燥する方法で迅速かつ簡易に観察することが可能になった。2. ウイルス感染にともなう細胞周期の変化を明らかにする目的で、アフィディコリンを用い、培養細胞系で細胞周期を同調させ、核多角体病ウイルス感染によってSおよびG2/M期で細胞周期が停止していることを明らかにした。3. 濃核病ウイルスの転写産物を明らかにするため、濃核病ウイルスゲノムのORFを組み込んだバキュロウイルスを作成し、発現を試みた。その結果、組み込んだORF由来のタンパク質の発現を確認し、mRNAの転写についての調査が可能となった。4. 野外昆虫における昆虫ウイルスの動態をチャノコカクモンハマキ幼虫におけるウイルス病有病率の世代間変動と環境中におけるウイルスの残存性から解析した。5. カイコの翅原基を用いて細胞分裂促進因子を検定する器官培養系の確立を行った。培養法は金網台法とし、5齢幼虫の翅原基を用い24時間、培養液のみで培養した後、血液とホルモンとともに検定対象となるものを添加し24時間後に細胞分裂数、DNA合成を調べることにより活性を調べる方法を作成した。6. カイコ細胞質多角体病ウイルス(BmCPV)のカイコ中腸と培養細胞における増殖性の違いを遺伝子発現レベルで明らかにするために、BmCPVの非構造タンパク質をコードする8番目と9番目の二本鎖RNAゲノムの塩基配列を決定し、組換えバキュロウイルスによる発現と特異抗体の作製に成功した。
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