研究課題
基盤研究(A)
1.昆虫ウイルスの観察を目的とした原子間力顕微鏡の利用について検討した。とくに、迅速な観察が可能である利点に応じた試料作製法を、核多角体病ウイルス(NPV)を材料として開発した。多角体中のNPV観察は30分程度で可能であり、昆虫病原体観察への応用の有効性が示された。2.ウイルス感染の際に昆虫体内で検出されるタンパク質の性状、動態について追究した。これらはウイルスにコードされたタンパク質ではなく、宿主の組織、ステージ特異的またウイルス感染に特異的なタンパク質であった。3.濃核病ウイルスの宿主昆虫体内における転写産物の検出と同定を行った結果、ORFに応じたmRNAが転写されていることが判明し、cDNAを得ることができた。また、ウイルスの増殖組織をin situハイブリダイゼーションによって解析した。4.宿主における病原ウイルスと寄生昆虫の相互関係を把握する目的で、2種の昆虫において、昆虫ボックスウイルスと寄生蜂の感染における拮抗作用について調査した。その結果、ウイルス感染によって寄生蜂の発育の遅延、羽化率の低下などの病原微生物による影響があることと、その影響は寄生体の感染時期によって異なることが判明した。5.器官培養系において作用する細胞分裂促進因子が蚕の体液中に存在することが明らかになり、培養検定系の検討と因子の同定を行った。その結果、翅原基をグレース液で培養し、20ハイドロキシエクダイソンと検定成分を含む培養液に移す検定系を確立した。6.カイコ細胞質多角体病ウイルス(BmCPV)のカイコ中腸と培養細胞における増殖性の違いを遺伝子発現レベルで明らかにするために、BmCPVの非構造タンパク質をコードする8番目と9番目の二本鎖RNAゲノムの塩基配列を決定し、組換えバキュロウイルスによる発現と特異抗体の作製に成功した。
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