研究分担者 |
村上 昇 宮崎大学, 農学部, 助教授 (80150192)
辻本 元 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60163804)
甲斐 知恵子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10167330)
森 裕司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40157871)
西原 真杉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (90145673)
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研究概要 |
本研究の主要な目的は,視床下部による代謝と摂食の制御機構の神経機序を追究することで,肥満,糖尿病,摂食異常などの病態を制御するとともに,脂肪蓄積や体成長を中枢性に制御する方法論の基礎を確立することである.このために,今年度は我々が既に作出しているヒト成長ホルモン遺伝子導入形質転換ラットに加えて,新たにヒト成長ホルモン受容体遺伝子,ならびに摂食・代謝制御に関わる遺伝子として同定されたobese(ob)遺伝子を導入した形質転換ラットを作出し,これら三者,あるいは三者間の子孫を代謝疾患モデル動物として確立させることを試みた.後二者の遺伝子を導入した形質転換ラットを作出するにあたって,全く新たな画期的な遺伝子導入方を開発した.これは導入遺伝子をリポソーム複合体の形で精巣内に投与し,一定期間経過後に正常雌と交配させ,出産個体を形質転換動物として得るものである.我々はこの手法を用いて,ヒト成長ホルモン受容体遺伝子およびob遺伝子を導入した形質転換ラットを作出することに成功した.特にヒト成長ホルモン受容体遺伝子を導入したラットにおいてはそのmRNAの発現を肝臓において確認することができた.さらに,ヒト成長ホルモン遺伝子導入ラットとの間のハイブリッド個体(バイジェニックラット)を作成することにも成功した.ヒト成長ホルモン遺伝子を発現する形質転換ラットでは,視床下部におけるソマトスタチンニューロンの活動が亢進し,成長ホルモン分泌低下症となり,高度の肥満を呈する.一方,ヒト成長ホルモンおよびヒト成長ホルモン受容体をもつバイジェニックラットでは,脂肪重量,血中レプチン濃度の減少が認められた.すなわち,肝臓に成長ホルモン受容体が過剰に発現することにより,脂肪重量が低下することが明らかとなった.
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