研究課題
平成8年1月から平成9年6月までの1年半の間に全国の研究協力病院に訪れたスポーツに伴う疲労骨折の症例を収集した.統一症例票を用いて経過を観察し、発生要因を個体の要因、方法の要因、環境の要因、指導・管理の要因に分けて分析すると共に、主要症例について社会心理的な側面から面接により発生の背景を探り、早期復帰への対応を検討した.症例は、男性119例、女性115例の計234例、252骨折であり、年齢は、男性6〜48歳(平均16.4±6.1歳)、女性9〜32歳(平均17.2±4.1歳)で、高校生・中学生の割合が大きかった.部位別では、下肢が全体の82.1%を占め、体幹9.4%、上肢8.5%の順であった.動作別では、走る50.0%、跳ぶ・投げる7.3%の順であり、「走り込み」の運動による下肢の疲労骨折が目立った.発生要因としては、方法の要因が主要なものであり、特に「過度の量」の他に、「全面生の軽視」78.3%、「誤った運動形式」58.3%、「個別性の軽視」26.7%、「漸進性の軽視」41.7%と、質の誤りが多いことが明らかになった.また、発症から初診までの期間が短い程、スポーツに復帰する期間が短い傾向が見られたが、一方、受信が早くても、スポーツ復帰に20歳以上も要した例も見られた.社会心理学的な側面では、「人に後れをとりたくない」、激しい向上心、スポーツ特待生の立場等の要素があることが示された.選手・指導者に対して、疲労骨折が起こる経緯や保存的治療の重要性を認識させ、選手本人の負っている社会的・心理的ストレスを理解して治療を行うことが重要であると思われた.
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