研究課題
今回わが国の国立大学動物実験施設協議会傘下の31施設について、マカク属(8種)とその他の属(6種)の計14種962検体を収集し、社団法人「予防衛生協会」でEIA法によるBウイルス抗体の検査を行った。その結果、総合成績では陽性サルが40%の割合で認められた。サル種別でみると、今まで報告されているカニクイザルが59%、アカゲザルが53%であり、予防衛生協会の過去の検査結果と特に問題になる差異があるとは思えなかったが、今回ニホンザルでも211/629(33%)の陽性個体を認められたことは新知見である。これらの陽性ザルを年齢別分布から見ると7歳以上で62%であり、加齢と共に陽性率が上昇していることが証明され、性成熟との関係が示唆された。新薬の安全性試験と異なり、わが国の大学等研究機関における医学研究では、ニホンザルを使用した研究が目立ち、カニクイザルやアカゲザルとそれ程遜色無い抗体陽性率を示したニホンザルは、今後、ライフサイエンス分野において要注意である。また、マカク属以外のサルにも陽性ザルでも低率ながら陽性個体を認めたことは、その意義について今後詳細な調査を必要とする。なお地域別、性別の陽性抗体分布を調べたが、特に顕著な特徴を見いだせなかった。