研究概要 |
研究第1年目である今年度は,(1)防災意識調査,(2)災害の記憶に関する調査,(3)災害時の認知-運動的達成に関する実験,及び,(4)災害時の認知的行動に関する実験の装置・設備の導入と調整を行った.(1)防災意識調査は,阪神淡路大震災を契機とした防災意識の変化を調べることを目的として,震災前の平成5年に大阪市立大学生を対象に実施した防災意識調査に新たな項目を追加し,震災の同年である平成7年及び次年である平成8年に大阪市立大学生を対象に行った.現在,1,000件に及ぶ個人データを分析中である.この調査は,経年変化を調べるため,来年度も実施する予定である.(2)災害の記憶に関する調査は,大阪市立大学生を対象に,阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件との記憶を合わせて調べることによって,いわゆる“フラッシュ・バルブ記憶"研究の流れにそって,災害の記憶の特殊性を調べた.これは上述の防災意識調査の結果を参照しながら分析する.(3)災害時の認知-運動的達成に関する実験では,災害発生による視環境の変容とそれへの運動的適応を想定し,側方置換プリズム眼鏡着用に対する順応事態としてシミュレートした実験を行った.実験では,側方置換プリズム眼鏡を被験者に6時間着用させ,時間的推移に従って,リーチングなどの身体部位の運動的適応,直立姿勢維持と歩行などの全身運動の運動的適応が,運動解析装置及び重心計を用いて記録された.(4)災害時の認知的行動に関する実験については,現在,パーソナル・コンピュータ上でバーチャル環境を構築し,災害時の地形変容及びランドマーク等の地理的手がかりの喪失への対処行動を調べる実験と空間識失調を想定・シミュレートした左右置換視界への適応を調べる実験とを行うために,バーチャル・リアリティ・システムを調整中である.これらでは生理的指標を記録することをも試みるべく脳波解析装置等を調整中である.
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