研究概要 |
本研究は、アラブ・エジプト共和国の首都カイロ市の南部に位置するフスタート遺跡から発掘された膨大な量の遺物を整理・分類し、編年を組み、文献資料と突き合わせることによってエジプト・イスラーム物質文化の歴史を明らかにすることを目的としている。 本研究で対象とするのは、1912年以来継続されているエジプト考古庁によるフスタート遺跡の発掘調査によって蓄積された100万点を超える出土品である。遺跡内にある考古庁の倉庫に収められた出土品を、飲料水用小壷のフィルター、土製パイプの雁首、ランプ、ガラス器類、中国陶磁器、ファイユ-ム陶器、ラスター彩陶器、ファーティマ朝陶器、マムル-ク朝陶器、輸入陶器、石製容器類、土器などの種類別に分け、フィルター、パイプ、ランプの順に作業を進める。 初年度の1996年度は、1994年度以来進めてきた約15,000点の倉庫内フィルターと約1,200点の欧米諸国諸博物館所蔵のフィルターの整理・分類を写真と実測図を用いて行った。また、資料のほぼ半数は熊本大学と中近東文化センターが共同して開発した『画像検索システム』に入力した。当初予定していたフィルターの画像データ入力は完了できなかったが、1997年度に完了する。 1996年度の成果は、約16,000点のフィルターの写真、約1,400点の実測図を整理し、ほぼ半数を画像・文字データとしてコンピューター入力し、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシア、アメリカ、カナダなど欧米諸国の主要大学・博物館とのネットワーク作りをおおむね完了したことである。また、ガラス器と中国陶磁器の整理・分類も順調に進み、ヒスバ、料理、飲料水に関する文献を多数蒐集した。なお、本研究に関連し、別途実施しているトゥール・紅海地域のイスラーム物質文化に関する調査研究の成果を裏面に掲載する。
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