研究課題/領域番号 |
08404018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兵頭 俊夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90012484)
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研究分担者 |
斎藤 晴雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60235059)
長嶋 泰之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60198322)
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キーワード | 陽電子ビーム / ライナック / 水晶 / 合成石英 / ポジトロニウム / 仕事関数 / 2光子角相関 / 拡散定数 |
研究概要 |
(1)フォトンファクトリー(高エネルギ加速器研究機構)のライナックを利用して得られる高強度低速陽電子ビームを用いて、水晶単結晶および合成石英の表面から放出されるポジトロニウムのエネルギー分布を測定した。水晶単結晶、合成石英両方に、1eVと3eVにピークをもつ分布が得られた。1eVのピークはバルク中で生成されたポジトロニウムの放出を示しており、ポジトロニウムの仕事関数は-1eVであると考えられる。これに対し、3eVのピークは試料表面で生成されたポジトロニウムの放出によるものであると考えられる。2つのピークの存在が確かめられたことにより、従来懸案とされていた、2光子角相関法によるデータと陽電子ビームによるデータの間の矛盾が解消された。 以上の結果から、試料中におけるポジトロニウムの束縛エネルギーを求めると2eVとなる。この値と、従来の手法による水晶中のポジトロニウムの測定結果の整合性について検討をすすめている。 (2)SiO_2およびMgF_2単結晶中のポジトロニウムの運動量分布の温度依存性を、1次元2光子角相関法を用いて測定した。また、得られた運動量分布の形状を、ポジトロニウム-格子相互作用から直接定量的に解析する方法を開発した。その解析法により、SiO_2中のポジトロニウムの有効質量、変形ポテンシャル、および拡散定数を求めることができた。また、MgF_2の場合も、200K以下の低温では、この解析法が有効であり、SiO_2と同様に有効質量等を求めることができた。さらに、高温になるとポジトロニウムの運動量分布が急速に広がる様子を、変形ポテンシャルの増大という形で定量的に調べることができた。
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